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【ロングトレイル・PCT】アメリカ4000km歩行で体験したハイキング文化について

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アメリカのロングトレイルと言われる、全長数千km以上もあるトレイルには独特なハイキングの文化があります。

「ハイキングの文化?」と言われて、ピンとくる人は少ないかもしれません。

私もアメリカのPacific Crast Trail(全長4000km以上あるトレイル。以下略、PCT)を歩く以前は、トレイルエンジェルやハイカーボックスのような単語を知っていても、ハイキング文化について理解できていませんでした。

ハイキング文化とは、ハイカーとトレイルエンジェルやトレイルタウンの住民が築いた不思議な関係です。

今回はPCTを歩いた時に出会った、ハイキング文化について紹介します。

カルチャーショックという言葉あるように、文化は実際に体験しないと気がつけない事が多いです。
本記事を読むことで、ハイキング文化の疑似体験をしていただけたら嬉しいです。

ハイキング文化はトレイルカルチャーやハイキングカルチャーなどと呼ばれることもあります。

トレイルエンジェル

トレイルエンジェルとは、ハイカーに宿泊場所の提供や、登山口までの送迎などのボランティアをしてくれる人たちのことです。
日本のお遍路さんのお接待の感覚に近いかもしれません。

PCTスタート地点のトレイルエンジェル宅。毎年、多くのハイカーがお世話になる。2022年で引退するとのこと。

トレイルエンジェルの連絡先はFacebookや、FarOutという地図アプリから調べます。
また、トレイルタウンでは親切な地元の人が、トレイルエンジェルを紹介してくれることもあります。

PCT最後地点のトレイルタウンMazamaのトレイルエンジェル宅は居心地が良く、PCTを歩き終えた後も数日滞在させてもらいました。
裏庭で自由キャンプができるだけでなく、ハイカー用の小屋が開放されていていたので、長旅で疲れた体を癒やすには最高の環境でした。

ワシントンのMazamaのトレイルエンジェルの敷地。ハイカーのために小屋と庭が開放されている。

そんなトレイルエンジェルですが、最近は引退をする人が増えてきているそうです。
その要因の一つに、マナーが悪いハイカーが増えたことがあります。
PCTは映画の舞台になったとこで、世界的にも有名なトレイルになり、多くのハイカーが集まるようになりました。
その結果、トレイルエンジェルに過度なサービスを求めたり、マナーが悪い人が増えたそうです。

Wrightwoodのトレイルエンジェル宅。庭にロバがいた。

トレイルエンジェルのほとんどの方は親切で、喜んでハイカーを支援してくれています。

感謝の気持ちを伝えるのは当たり前ですが、ドネーションをすることはトレイルエンジェルだけでなく、ハイカーにとって重要です。

トレイルエンジェルのサポートの有無は、ハイキングの難易度に関わります。

お金の話をすると少しやましい感覚がありますが、ドネーションは感謝の表現方法の一つです。
トレイルエンジェルが継続的にハイカーの支援をしてくれるように、さらに将来のハイカーたちから素敵な体験を奪わないために、ドネーションすることはとても大切です。

トレイルエンジェルによるトレイルマジック。キャンプをしながら、数日間もハイカー達をもてなしていた。

多くのトレイルエンジェルはドネーションを快く受け取ってくれますが、中には断る人もいます。
その場合は空気を読んで、感謝を他の形で伝えましょう。

トレイルマジック

トレイルマジックとは、トレイル上の思いも寄らないところで食べ物や飲み物が手に入る素敵なイベントです。

トレイルの傍らに置かれたクーラーボックス。キンキンに冷えたコーラが入っていた。

カリフォルニアの暑いトレイルの傍らに置かれたクーラーボックスに、キンキンに冷えたコカ・コーラや果物が入っていたり、登山口に陽気なアメリカ人がホットドックを焼いて待ち受けていたりと様々なトレイルマジックがあります。
キャンプ場で泊まった時に、隣でオートキャンプをしていた人に食事を頂いたこともあります。

登山口付近で出会ったトレイルマジック。道路からアクセスがいいと、ホットドックやハンバーガーなど豪華な食事を食べられることもある。

トレイルマジックをしてくれる人は、トレイルエンジェルや、過去にPCTを歩いたことがある人、地元の人や観光客など様々です。

トレイルマジックはどこで出会えるか分からないですが、舗装路やダートロードが近くにある登山口周辺に多くあります。
また、FarOutという地図アプリでいつどこでトレイルマジックがあったのか知ることができ、稀にトレイルマジックの予告情報を見つける事ができます。

誰もいない川に放り込まれていたジュース。これもトレイルマジック。

疲れている時や、本当に思いも寄らないところでトレイルマジックを見つけると、とても感激します。

トレイルタウン

トレイルタウンとは、ハイカーが食料の補給に立ち寄る、トレイルの近くにある町です。
多くのトレイルタウンはハイキングへの理解があり、ハイカーに対してフレンドリーに接してくれました。

Sierra Cityの公共トイレ。無料のシャワーやWi-Fiもあった。

レストランやカフェではハイカー用の大盛りメニューを目にすることがあり、無料でコーヒーなどをくれるところもありました。

Kennedy Meadowsで食べた大きなパンケーキ。その名を「Hiker Breakfast」。

Kennedy MeadowsのGrumpy Bears Retreatでは、Hiker Breakfastというものすごく大きいパンケーキがあります。
JulianとWrightwoodのカフェではコーヒーとアップルパイやドーナツ、Quincyのおもちゃ屋さんではアイスクリームを頂きました。

Quincyのおもちゃ屋さんで頂いた無料アイス。店長がとてもフレンドリーだった。

また、グローサリーストアの前で買い食いをしていたら、地元の人から差し入れの食べ物を頂いたこともあります。

ホステルやモーテルではハイカーレートと呼ばれる割引価格で泊まれるところもありました。

Snoqualmie Passの「Washington Alpine Club」。1泊30$で朝夕食、シャワー、ランドリー付きだった。

ハイカーにとってトレイルタウンは補給をするだけでなく、トレイルで疲れた心身を休めるためにもとても重要です。
居心地がいいハイカータウンに出会ったら、その日は歩くのを切り上げたり、zero day(トレイルを全く歩かない日)をとっても良いと思います。

キャッシュ(ウォーターキャッシュ)

キャッシュとは、トレイルエンジェルがハイカーを支援するために置かれた水です。
水の調達が難しい区間によく置かれています。

砂漠地帯に置かれた大量のウォーターキャッシュ。

カリフォルニは気温が高く、半日以上歩いても水源がない区間があります。
さらに運が悪いと、川などの水源が枯れていたり、水質汚染で飲めないこともあります。

キャッシュはそのような区間に置かれていていることが多く、安全にハイキングするのにとても助かりました。

トレイルエンジェルが汲んだ湧き水がドラム缶に入っているウォーターキャッシュ。

キャッシュの量は場所によって大きく異なります。
100l以上の水があるところから、ペットボトルが数本しか置いてない場所もありました。

キャッシュがどこにあって、どれくらいの量が残っているかは、FarOutという地図アプリで確認ができます。
コメント欄をいちいち確認しないといけないので少し面倒ですが、大事な作業なので休憩中にFarOutで確認をしていました。

中身が空のウォーターキャッシュ。

キャッシュに限らず、水やトレイルの情報は非常に大切なので、他のハイカーとコミュニケーションを取るのは大切です。

ヒッチハイク

トレイルとトレイルタウンの移動はヒッチハイクをすることが多いです。
ピックアップトラックの荷台に乗ることもあり、映画のワンシーンのような体験をすることができた楽しかったです。

視認性がよく、ヒッチハイクの成功率を上げてくれる素敵な「MIYAGEN Trail Engineering」の手ぬぐい。

トレイル周辺では、ハイカーがよくヒッチハイクしているので、地元の人の車がよく止まってくれます。

交通量がないところでは、車が1時間に1〜2台しか通らずに苦労することもあります。
携帯の電波が入るところであれば、トレイルエンジェルに電話をするのも良いです。

送迎をしてくれるトレイルエンジェル。感謝の気持としてチップを支払うことも多い。

また、トレイルやトレイルタウンの周辺から離れると、ヒッチハイクが成功する確率が低くなります。
私は、山火事によってEtnaからAshlandの区間を迂回するのに、100kmの距離をヒッチハイクで3回乗り継いで移動しました。
その時、Yrekaという町でヒッチハイクをしたのですが、2〜3時間ほど車が止まりませんでした。

ハイカーの見た目はお世辞でも綺麗とは言えないので、ハイキングに親しみがない人はあまり乗せたくないと考えるはずなので仕方がないです。

EtnaからAshlandをヒッチハイクで移動。カリフォルニアとオレゴンの州堺。

長距離の移動はバスやトレイルエンジェルに相談したほうが無難かもしれません。
トレイルエンジェルにお願いして、車に乗せてもらったときは、感謝の気持ちと一緒になるべくチップを渡していました。

トレイルネーム

トレイルネームとは、ハイカー同士で呼び合うのニックネームです。
トレイルネームは知っているけど本名は知らないということもザラです。

トレイルネームは自分でつけることもありますが、人から付けてもらうこともあります。

初めて会う人とはトレイルネームで自己紹介することがほとんどです。
その時、トレイルネームのエピソードも一緒に話すと仲良くなるきっかけになります。

休憩中のS.O.SとHome Made。

お手製の食事を家から郵送していた”Home Made”、映画館があるトレイルタウンに寄る度に「トップガン マーヴェリック」を鑑賞していた”Maverick”、Garmin inReach Mini 2が壊れてモニターが常にSOS表示になった”S.O.S”など、人それぞれのエピソードがあって面白いです。

アメリカンダイナーのゲームで遊ぶMaverick。

外国人の名前は日本人には馴染みがないので、覚えるのが大変です。
ですが、トレイルネームはエピソードも一緒に教えてもらえるので、印象に残って自然と覚えることができました。

絶景に目を奪われるハイカーたち。「最高」とつぶやいたらその日からPsychoと呼ばれるようになった。

ちなみに私のトレイルネームは”Psycho”です。
仲の良いハイカーと絶景を見たときに、私が思わず「最高〜!」と言ったのが由来です。
他のハイカーは”Psycho”と勘違いして不思議そうな顔をしていましたが、理由を説明したら納得してくれてそのままトレイルネームになりました。
“Psycho”は良い意味で使われないですが、そのギャップとエピソードも含めて気に入ってます。

ハイカーボックス

ハイカーボックスとは、ハイカーがいらなくなった装備などを入れる箱です。
その代わり、必要なものを見つけたら自由に持ち出しても良いことになってます。

まだ使えるけど不要になったギアを入れておく「ハイカーボックス」。もし必要なものがあった自由に持ち出しても良い。

トレイルタウンの郵便局やホステル、ギアショップなど、ハイカーが集まるところに置いてあります。
ハイカーボックスはプラボックスやダンボールなど決まった入れ物がありません。
何も知らない人から見たら、ゴミ箱に勘違いされそうなボロボロな箱ものもありました。

靴がたくさん置かれたハイカーボックス。サイズには困らなそうだが、誰が履くのだろうか。

ハイカーボックスには装備の他にも、食料が入っていることがあります。

アウトドア用のフリーズドライ食品や、食べかけのポテトチップス、ジップロックで小分けされた中身が不明な食べ物など、当たり外れの振り幅が大きいです。
食料を買う前に一度ハイカーボックスを確認すると、少し節約ができることがあります。

食料がたくさんあるハイカーボックス。まるで宝の山だった。

また、残量が少ないガス缶もあるので、うまく工夫すれば新しいガス缶を買う頻度を少なくできます
あまりおすすめしないですが、ガスを他のガス缶に移すアダプターが市販されているので、そういった物を使えば、ガス缶は買わずにすむかもしれません。

メールドロップとバウンスボックス

メールドロップとは、立ち寄る予定のトレイルタウンに、食料や装備などを郵送することです。

小さい町では十分な食料を調達できない事があるので、必要な食料をメールドロップで送ります。
また、普段から食べ慣れている食材、日本から持ってきた食材も送る場合もあります。
送り先は、郵便局やトレイルエンジェル宅、アウトドアショップなどトレイルタウンによって異なります。

トレイルの近くの施設に送られた大量の郵送物。多くのハイカーがメールドロップしている。

バウンスボックスとは、使う予定がある装備や、使わなくなったけど日本に持ち帰りたい装備などをまとめた郵送物です。

バウンスボックスを郵便局で受け取り、装備の入れ替えをして、再び立ち寄る予定の町の郵便局にバウンスボックスを送ります。
そうすることで、持ち歩く装備を少なくして軽量化ができます。
郵便局が営業していないと荷物を受け取りと配送依頼ができないので、計画には注意が必要です。

カナダ国境直前の食料たちの一部。インスタント麺を大量にメールドロップした。

オレゴンとワシントンは大きな町が少ないので、メールドロップやバウンスボックスを利用すると良いかもしれません。

私は、荷物の受け取りで行動が制限されるのがイヤなのと、なるべく出費を抑えるためにあまり利用しませんでした。
StehekinとMazamaの2箇所だけに食料のメールドロップをしました。

レジスター

レジスターとは、トレイルやトレイルタウンに置かれた記録帳です。
だれがいつそこに着いたのか確認したり、ハイカー同士のメッセージのやり取りに使ったりします。

PCT中間地点のレジスター。8月一番乗りだった。

スタートした日が一緒だったのに、歩くペースが速く、先に進んだハイカー。
実際に面識がないけど、歩くペースが同じくらいなので、レジスターでよく名前を目にするハイカー。

色んな人たちとの緩い繋がりを感じることができるのが好きでした。

多くのハイカーがレジスターに名前を残す。眺めているだけで楽しい。

また、場所によっては数年前のレジスターも残っています。
レジスターをパラパラと眺めると「自分と同じことをしている人がこんなにたくさんいるのか」と歴史を感じることができます。

インターネットやSNSが普及した時代だからこそ、紙に記を録することで、現実にその場所に訪れた証明を残す良さみたいのがあるのかもしれません。

まとめ

私はハイキング文化を以下のように考えています。

ハイキング文化とは

ハイカーとトレイルエンジェルやトレイルタウンの住民が築いた不思議な関係がハイキング文化

ハイカーはハイキングを楽しむためにロングトレイルを歩きます。
ですが、トレイルエンジェルやトレイルタウンがいないと、ロングトレイルを歩くのが困難になります。

トレイルエンジェルやトレイルタウンの住民はとても親切な人が多く、快くハイカーを支援してくれます。

それに対して、ハイカーができることはあまり多くありません。
感謝の気持ちを伝えることが一番大切ですが、それに加えてトレイルで経験したことをトレイルエンジェルやトレイルタウンの住人に話すことも大切だと考えています。

トレイルエンジェル達がハイカーをサポートしてい姿や話をしている表情が誇らしげに見えました。
そして、純粋にハイカーとの交流を楽しんでいました。
もしかしたら、決まった季節にトレイルを歩いてくるハイカー達を、渡り鳥のように季節の風物詩に感じているのかもしれません。

立つ鳥跡を濁さずという言葉があるように、お世話になったトレイルエンジェルの家やトレイルタウンは綺麗にして立ち去りましょう。
そして、ハイカーは鳥ではないので感謝の言葉を忘れずに。

以上、本記事がハイキング文化について少しでも参考になれば嬉しいです。