皆さん、ハイキングに行くときの食料は何を意識して選んでますか?
「食料が重いから量を減らしたら全然足りなかった、、」、「十分の食料を食べてるはずだけど途中でバテてしまう、、」などの経験はありませんか?
ハイキングは行動時間が長いため、大量のエネルギーを消費します。
また、補給のタイミングや必要な栄養素を補給しないと、すぐにエネルギー切れを起こしてしまいます。
ハイキングで必要なエネルギーを得るためには、次のポイントを抑えておくとよいです。
- 食事の量は普段と変えずに、足りないエネルギーは行動食と体に蓄えている脂肪を活用する
- 行動食を100~200ckalのものをお腹がすく前に食べる(1時間に1つ)
- 糖質や脂肪をエネルギーに変換するためのビタミンB1・B2をこまめに取り入れる
また、本記事では1日当たりにどれくらいの食料を持っていけばいいのか、考え方と目安も紹介しています。
ハイキングに持っていく食料を見直して、今まで以上に楽しくハイキングを楽しみませんか?
目次
エネルギー不足によるトラブル
ハイキング中にエネルギーがなくなってしまうと、その日のうちに下山できなかったり、ケガや道迷いなどのリスクが高まります。
そうならないようにするためにエネルギー管理は大切です。
以下にエネルギー不足によるトラブルの一例を紹介します。
シャリバテ
代表的なのがシャリバテ(ハンガーノック)です。
シャリバテは、糖質エネルギーの供給不足が原因で起こります。
シャリバテは、疲労困憊によって全身の運動パフォーマンスが著しく低下します。
自動車のガス欠のように、突然体が動かなくなることもあります。
また、脳は主に糖分をエネルギーの供給源にしているので、糖質が枯渇すると脳の働きにも影響が出てきます。
集中力や判断力が低下し、転倒、滑落、道迷いなどのアクシデントを引き起こすこともあります。
筋力低下
体は糖質や脂質からエネルギーが得られなくなくなると、筋肉を分解してエネルギーを得ようとします。
疲労蓄積に加え筋肉を分解してしまうと、筋力が低下してしまい危険です。
筋力が低下してしまうと、体を支えられずに転倒してしまいケガをするリスクが高まります。
ハイキングで必要なエネルギーの計算方法
エネルギーの計算方法はいくつかあります。
今回は、厚生労働省が定めた「健康づくりのための身体活動基準2013」を使用し、運動による消費エネルギーを次のように計算します。
運動強度(メッツ)は運動時の負荷、キツさを表した単位です。
代表的な運動例の運動強度は次のようになります。
メッツ | 運動例 |
---|---|
1 | 安静時 |
2.5 | ヨガ |
3 | 散歩 |
6.3 | 荷物なしの登山 |
6.5 | 0~4.1kgの荷物の登山 |
7 | ジョギング |
7.3 | 4.5~9kgの荷物の登山 |
8.3 | 9.5~19.1kgの荷物の登山 |
9 | 19.1kg以上の荷物の登山 ランニング(時速8.4km/h) |
ハイキングの特徴は、運動強度はそれほど高くないのに対し、行動時間が長い点にあります。
例えば、上記の表と計算式を使って体重60kgの人が重さ9kgの装備(7.3メッツ)で7時間のハイキングをした場合、消費エネルギーを計算すると次のようになります。
おにぎり(1個100g=179kcal)に換算すると17個以上必要になります。
上記の場合、日帰りを想定しているので、必要な分の食料を持っていくことはできます。
しかし、数泊するような行程だと、荷物が重くなったり行動する日数分の食料が必要になるので、とても持ち運べる量ではなくなってしまいます。
そこでポイントになるのが以下になります。
体重60kgの人がフルマラソンを5時間(時速8.4km/h)で完走した場合、消費カロリーは約2700kcal( 9(メッツ)×5(h)×60(kg))となります。
マラソンのようなハードなスポーツは長時間できませんが、ハイキングようにあまり運動強度が高くないと、体への負担が少ないため長時間行動することができます。
長時間行動した結果、ハイキングは多くのエネルギーが必要となるのです。
エネルギーを得るための仕組み
体を動かすためはエネルギーが必要になりますが、どのように得られるのか簡単に解説します。
また、ハイキング中のエネルギーについても合わせて紹介します。
体に蓄えられた大量のエネルギーを活用する
体を動かすためのエネルギーは糖質、脂質、タンパク質などを代謝させて生み出しています。
エネルギーを生み出す経路はいくつかあるのですが、ハイキングのように運動強度が低い運動では、主に糖質と脂質からエネルギーを得ています。
また、糖質と脂質からエネルギーを生成するには酸素が必要となるので、ハイキングは有酸素運動とも言われています。
しかし、糖質は体に貯蔵できる量が少いため、すぐに使い切ってしまいます。
一方、脂質は体脂肪として糖質よりも多く体に貯蔵されています。
一般的な成人男性(体重60kg、体脂肪率15%)は約9000gの脂質があると言われています。
これは、脂質から得られるエネルギーを1gあたり約7kcalとして計算すると、6万kcal以上のエネルギーになります。
おにぎり(1個100g=179kcal)に換算すると約351個になります。
ハイキングでは、この膨大なエネルギーを効率よく活用するのがポイントになります。
しかし、脂質と糖質はロウソクのような関係になっており、脂質からエネルギーを得るためには糖質も一緒に使わないといけない性質があります。
糖質 | 脂質 | |
---|---|---|
ロウソク | 芯 | ロウ |
単体燃焼 | できる | できない |
燃えるスピード | 速い | ゆっくり |
持続性 | すぐに燃え尽きる | 長持ち |
もし、糖質がなくなり脂肪からエネルギーが得られなくなると、筋肉のタンパク質を分解してエネルギーを生成しようとします。
更に、タンパク質からのエネルギー供給が消費エネルギーに追いつかない場合、シャリバテを引き起こして行動不能になってしまいます。
ハイキング中のエネルギーの考え方
ハイキングのように、行動時間が長いと運動中にすべての糖質がなくなってしまいます。
そうならないように、こまめに行動食を食べて栄養を補給するのが大切です。
目安として、1時間に100~200kcalの行動食を食べるのがおススメです。
例えば、体重60kgの人が重さ9kgの装備(7.3メッツ)でハイキングをした場合、①1時間あたりに消費するエネルギーは以下になります。
これには、日常生活分のエネルギーも含まれているので、その分を差し引きます。
日常生活の活動強度を2.3メッツとすると、②日常生活の消費するエネルギーは以下になります。
そうすると③不足するエネルギーは以下になります。
不足したエネルギーは、体の糖質と脂質を活用します。
糖質と脂肪からエネルギーを得られる割合、最大で50%ずつと言われています。
体内の④糖質からのエネルギーと⑤脂質からのエネルギーをそれぞれ150kcakずつエネルギーを得ることで、ようやくハイキングに必要なエネルギーになります。
ポイントをまとめると以下になります。
- ハイキングで消費するエネルギー=日常生活分のエネルギー+不足したエネルギー
- 日常生活分のエネルギーは普段通りの食事をとっていれば考えなくてよい
- 不足分したエネルギーは体内の糖質と脂質から得る
- 行動中は体内の糖質が枯渇しないように消費した糖質を行動食で補給する
1回の食事の量はなるべく変えないようにして、消費した糖質のエネルギーは行動食から補給することで、エネルギー切れを防ぐようにします。
なお、息の上がるような速いペースで歩くと糖質が優先的に消費されるので、注意が必要です。
なるべく、脂質からエネルギーを得るために、意識してゆっくり歩くか、トレーニングなどして速いペースで歩いても息が上がらないように慣れておくと良いです。
ハイキングの食料計画
パーティの場合は共同装備を使うことで、パーティ全体の装備の重さを軽くして、その分の食料にまわすことができます。
しかし、ソロハイクの場合はすべての荷物を一人で背負わなないといけません。
ハイキングに持っていける食材の量や種類には制限があるため、最初は何をどれくらい持っていけばいいのか分からないかもしれません。
次に、持っていく食料の目安とどういったものを用意すればいいか紹介します。
持っていく食料の目安
ハイキングに持っていく食料は、日帰りの場合は昼食+行動時間分の行動食とを用意します。
しかし、数日や1週間以上の山行になると、十分な食糧(日常生活分の食料+行動食)を持ち運ぶのはとても大変です。
宿泊をするのであれば、1日あたりの食料は600~900gを目安として計画すると良いです。
ルートの長さや難易度、食事をどれだけ楽しむを考慮して量は調整してください。
- 食料を軽量化した場合
- 体への負荷が減るので消費エネルギーが少なくなる
- 身軽に行動でスピードが出るので1日当たりの移動距離が延びる
- ひもじい
- 十分な食料を持っていく場合
- 体への負荷が増えるので消費エネルギーが多くなる
- 歩くスピードがゆっくりになるので1日当たりの移動距離が短くなる
- 充実した食事を楽しめる
最初のうちは少し余裕を持った食料計画をするのが安全です。
食料は余るかもしれませんが、徐々に自分にはどれくらいの食料が必要なのか分かっていきます。
また、山小屋によっては食事や食料を提供しているところもあります。
また、ルート上にそういった所があるか確認し、積極的に利用すると持っていく食料を減らすことができます。
厚生労働省では「エネルギー産生栄養素バランス」より、食料の栄養バランスを糖質60%、脂質20%、タンパク質20%で構成したと仮定します。
それぞれの栄養素から得られる1gあたりのエネルギーは糖質4ckal、脂質7kcal、タンパク質4kcalなので、1gの食料から得られるエネルギーは4.6kcalです。
1日あたりの食料を600~900gとした場合、食料から得られるエネルギーは2760~4240kcalです。
例えば体重60kgの人が重さ9kgの装備で7時間の行動した場合、約3066kcalのエネルギーを消費します。
脂肪からえられるエネルギーは最大で1050kcalになるので、食料から摂取しないといけないエネルギーは2061kcal(3066kcal-1050kcal)になります。
600g(=2760kcal)の場合、行動中はエネルギー切れになることはりませんが、行動時間以外も基礎代謝としてエネルギーを消費することを考慮すると、だいぶ攻めた食料計画になります。
900g(=4240kcal)の場合では、行動時間以外の基礎代謝のエネルギーや体を回復する十分の栄養も取れますが、山行が3泊、一週間、10泊と長くなるにつれて重さが体の負担になります。
行動食
行動食は、栄養不足になるのを防ぐためのおやつです。
1時間に100~200kaclの物を食べるようにします。
行動食には自分が食べておいしいと思うものを中心にして、栄養にも注目して選んでください。
エネルギーとして消費した糖質だけでなく、糖質や脂質からエネルギーをえるために必要な栄養素のビタミンB1・B2が含まれているものを選ぶようにしましょう。
ビタミンB1・B2が不足していると、どれだけ糖質、脂質があってもエネルギーを生産することができません。
ビタミンB1は、カカオマスを使ったチョコレート、カシューナッツ、全粒穀物などに多く含まれています。
ビタミンB2は、アーモンド、海苔に多く含まれています。
ミックスナッツやアーモンドチョコレート、全粒粉が使われたお菓子や海苔おにぎりや米菓などがこれらの行動食としておススメです。
また、汗などで塩分も失われるので、甘いものだけでなく塩気のある食べ物もあると良いです。
個人的にお気に入りの行動食は一本満足バーです。
栄養価も高く、ビタミンB1・B2も含まれており、とてもおいしいです。
行動食を食べる際の注意点は、一度に大量の糖分を取らないことでです。
一度に大量の糖分を取ると、血糖値が急上昇したのち一気に下落して低血糖になります。
低血糖の状態になると、思うようなパフォーマンスを出せなくなるので、行動食の食べ過ぎには気を付けてください。
朝・昼・夜ごはん
たくさん行動食を食べるように紹介しましたが、ハイキング中は朝・昼・夜ごはんから栄養を摂取します。
普段と同じような食事をとるのが理想的ですが、以下に気を付けて食材を選ぶとよいです。
私の場合、移動を楽しみたいので以下のように簡単に済ませています。
- 朝ごはんはテント場から出発前に行動食を2つとバーナーで温かい飲み物やスープなどを飲みます。
- 昼ごはんは少し長めの休憩をとり、行動食と腹持ちの良い食品(出発の時に水で戻したアルファ米やコンビニおにぎりなど)を食べることが多いです。
- 夕ご飯はフリーズドライ食品や加工食品などを使って他の食事よりも少しだけ豪華にしてメリハリを持たせています。
主食にはアルファ米を持っていきます。
アルファ米にはいろんな味があるので、飽きないようにいろんな種類のアルファ米を持っていくようにしています。
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まとめ
ハイキングでエネルギー不足にならないようにするためのポイントは、以下になります。
- 食事の量は普段と変えずに、足りないエネルギーは行動食と体に蓄えている脂肪を活用する
- 行動食を100~200ckalのものをお腹がすく前に食べる(1時間に1つ)
- 糖質や脂肪をエネルギーに変換するためのビタミンB1・B2をこまめに取り入れる
ハイキングに持っていく食料を見直して、今まで以上に楽しくハイキングを楽しんでください。