みちのく潮風トレイル(略称、MCT)は1000km以上ある東北沿岸にあるロングトレイルです。
これだけ長い距離を歩くにはどれくらいの日数が必要なのか、食料補給はどうすれば良いのかなど多くの疑問が浮かぶと思います。
本記事では、これらの疑問を少しでも解決するために、以下について紹介します。
- 私のMCTスルーハイクの全行程
- MCTの計画の流れ
私は2023年春にMCTをスルーハイク(全線踏破)しました。
人によってかかる行程は異なるので、1つのモデルケースとして参考にしてください。
- 日数:44日(2023/04/03〜2023/05/16)
- 総移動距離:1028km(スタート:相馬、ゴール:八戸)
- Zero Day:4日
- 宿の利用:20回
計画の流れでは、私が計画したことや、事前に知りたかったことを紹介します。
- トレイルについて知る:より充実した旅にするため
- 地図を手に入れる:トレイルの全体像を掴む
- 日数を決める:歩くための必要な日数を把握する
- 季節を決める:休みと歩きやすい時期を調整する
- ルートを決める:どんな旅にしたいか決める
- 宿泊方法を考える:宿泊施設や野営の頻度を決める
- 補給頻度を考える:どこで何が買えるか把握する
- 装備の準備をする:必要な装備、あると楽しそうな装備を用意する
これからMCTを歩こうと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
それでは解説に入ります。
目次
みちのく潮風トレイルを歩いた時の行程
みちのく潮風トレイルを歩いた行程の概要は以下になります。
- 日数:44日(2023/04/03〜2023/05/16)
- 総移動距離:1028km(スタート:相馬、ゴール:八戸)
- Zero Day:4日
- 宿の利用:20回
より詳しい内容を知りたい方は以下の画像を拡大して見てください。
1,000km以上のトレイルを歩くとなると、必要な日数は人それぞれです。
参考になるところと、そうでないところがあると思うので、1つのモデルケースとして参考にしてください。
べんぞー
自分のペースで楽しくハイキングしてね。
みちのく潮風トレイルの計画の流れ
次に私がMCTを歩くための計画の流れを紹介します。
以下の順に進めるとスムーズに計画を立てれますので、ぜひ参考にしてください。
- トレイルについて知る:より充実した旅にするため
- 地図を手に入れる:トレイルの全体像を掴む
- 日数を決める:歩くための必要な日数を把握する
- 季節を決める:休みが取れる時期と歩きやすい時期を調整する
- ルートを決める:どんな旅にしたいか決める
- 宿泊方法を考える:宿泊施設や野営の頻度を決める
- 補給頻度を考える:どこで何が買えるか把握する
- 装備の準備をする:必要な装備、あると楽しそうな装備を用意する
トレイルについて知る
まず最初に、みちのく潮風トレイルがどの様なトレイルか知るのが大切です。
MCTは全長1,000kmと距離に注目されることが多いですが、トレイルの成り立ちや関係者の思いを知ることで、MCTの旅がさらに充実します。
べんぞー
多彩な地形や素晴らしい景色はもちろん、歴史的な場所や文化遺産も多く、東北地域の魅力を存分に体感できるトレイルだよ。
みちのく潮風トレイルをより詳しく知るには以下が役立ちます。
みちのくトレイルクラブ
MCTの管理運営団体。トレイルについての様々な情報が集まっている。
書籍「TRAILHEAD 軽量登山最前線 ロングトレイル Vol.2」
2023年9月27日発売のMCT特集号。MCT関係者のインタビューや、全エリアの解説が載っており計画にも役立つ特におすすめな一冊。
名取トレイルセンター
宮城県名取市にある施設。経験豊富なスタッフやトレイルの最新情報が集まる重要な拠点。
私がMCTを歩いた感想をこちらの記事で紹介してますので、気になる方はご覧になってください。
地図を入手する
地図は計画だけでなく、歩いている時も使う必須装備です。
みちのく潮風トレイルの地図は以下の2種類あります。
- 紙の地図:マップブック
- GPXデータ:地図アプリ、オンラインマップ
べんぞー
それぞれ使い勝手が異なるから、両方そろえて使い分けるのがオススメだよ。
MCTは全長1,000km以上あるので、最初から細かい地図を見てしまうと情報が多くて取り扱いが大変です。
まずは、ざっくりと紙の地図で全体像を捉えたあと、GPXデータなどで気になる箇所を調べた方が効率的に進められます。
さらに、以下のポイントを押さえて地図を見ると、実際に歩くときも柔軟に対応できるようになります。
【地図を見るポイント】
- 宿泊施設、補給地が少ない区間
- アップダウン激しく、肉体的にきつそうな場所
- 天候などの条件により、通行が制限される区間
公式の地図「マップブック」、地点情報がまとめられた「データブック」
紙の地図「マップブック(Map Book)」は公式サイトから販売されています。
地図をペラペラと眺めるだけでも全体像をイメージしやすくなり、標高差や食料補給が難しそうな区間などが感覚的にわかります。
合わせて、補給地や水場などの距離がまとめられた「データブック(Data Book)」も一緒に見ておくと、距離感を把握しやすくなります。
GPXデータ:地図アプリ、オンラインマップ
マップブックに載っていない情報を見るにはGoogle Mapなどの地図アプリが便利です。
マップブックで把握しきれない地図に載っていないお店や宿泊施設の情報も地図アプリで容易に見つけられます。
べんぞー
お店の営業時間を調べるのにもつかえるよ。
また、実際にトレイルを歩いている時は地図アプリが非常に便利です。
GPS機能で自分の位置を確認し、目的地との位置関係もわかりやすく、道に迷うこともほとんどありません。
オンラインマップ・GPXデータはこちらのリンクから取得できます。
自分が使い慣れている地図アプリにGPXデータをインポートして活用してください。
日数を決める
みちのく潮風トレイルの総移動距離は1,000km以上です。
非常に距離が長いため、必要な日数は人によって異なります。
MCTをスルーハイクするのにかかる日数の目安は以下です。
- 1日15〜20km歩く人:2ヶ月
- 1日20〜25km歩く人:1.5ヶ月
- 1日25〜30km歩く人:1ヶ月
1日の歩く距離がイメージできない方は、次に紹介する内容を参考にしてください。
1日の歩く距離の計算
ざっくりですが、1日の歩く距離を計算します。
1日の歩く距離の計算式は以下です。
一般的な人がMCTを歩く速度と行動時間をそれぞれ以下のように仮定します。
- 歩く速度:3km/h
- 行動時間:8時間
上記の計算式と数値をベースにして、自身の歩く速度や体力を考慮して計算してください。
【1日の歩く距離の例】
- 歩く速度が普通、体力が普通:24km(時速3km/h x 8時間)
- 歩くのが遅い、体力に自信なし:17.5km(時速2.5km/h x 7時間)
- 歩くのが速い、体力に自信あり:31.5km(時速3.5km/h x 9時間)
べんぞー
ロングトレイルは競争じゃないよ。自分のペースで歩き、ハイキングを楽しんでね。
【歩く速度】
以下の理由から、MCTの歩く速度を時速3km/hとします。
- 平地で歩く時速:速度は4km/h
- ハイキングルートを歩く速度:1.5〜2km/h
- MCTは全体を通して歩きやすい区間が多いので、MCTを歩く速度を平地のハイキングルートの中間と仮定
【行動時間】
8〜18時の10時間トレイルで行動するとして、その間に休憩を2時間取ると仮定します。
実際に歩いた時間は10時間 – 2時間なので、行動時間を8時間とします。
休みが取れない場合、小分けに歩くセクションハイクがおすすめ
全線を歩くための期間はわかったけど、スルーハイクするだけの休みが取れないよ。。。
多くの人にとって、1ヶ月以上のまとまった休みを取るのは難しいと思います。
その場合は、一度に歩くのではなく、小分けにして歩くセクションハイクがおすすめです。
単純に計算すると、もし全線を歩くのに2ヶ月かかる場合、1週間のセクションハイクを8回繰り返せば全線歩けます。
セクションハイクは、トレイルまで移動する手間はかかりますが、スケジュール調整がしやすく、好きなシーズンを選んで歩けるので、ハイキングを楽しむ幅がより広がるのが魅力です。
計画は程々に
長期の登山ルートを歩く際には、細かい計画を立てることが一般的ですが、みちのく潮風トレイルは1〜2ヶ月と期間が長いため、細かく計画を立てるのは困難です。
私の場合は、次の目的地までの何日間で行くかを決め、その間はその日の気分で歩いていました。
目的地にいつまでに到着するか決める→数日歩く→目的地にいつまでに到着するか決める→数日歩く・・・を繰り返すイメージです。
べんぞー
もちろん、どこで食料補給をするか、寝床はどこにするかなどの目星をつけるよ。
もし、全ての行程を1日1日計画する場合は、余裕を持った1日の歩く距離を設定してください。
余裕をもたせることで、悪天候やアクシデントが発生しても計画通りに歩きやすくなります。
季節を決める
みちのく潮風トレイルには、歩くのに適した季節があります。
ハイキングを楽しむため、適切な季節を選ぶことがおすすめです。
おすすめの季節は春と秋
みちのく潮風トレイルを歩くのに適した季節は春と秋です。
春は桜の花や新緑が美しい季節で、秋は紅葉が見頃を迎えることで景色が一層美しくなります。
さらに、歩くのに丁度良い気候なので、景色を楽しむことに集中できます。
夏は注意が必要、冬はおすすめしない
夏は気温が高いので熱中症の注意が必要です。
MCTは全体的に標高が低く舗装路の区間も多いので、日中は高い気温の中を歩くことになります。
もし夏に歩く場合は、熱中症にならないように水分や塩分の補給に気をつけてください。
べんぞー
夏は過酷そうだけど、海が綺麗なところが多かったから、休憩で海水浴をするのも良さそうだよね。
冬は東北の厳しい寒さと積雪によりトレイルが封鎖されたりすることがあります。
体力やスキルに自信がある方以外は避けた方がよいです。
ルートを決める
みちのく潮風トレイルのルートは南下と北上の2通りです。
進む方向はどちらでも問題ないですが、旅の印象が大きく変わります。
べんぞー
それぞれの特徴を抑えてルートを決めてね。
みちのく潮風トレイルは以下の3つのブロックに分けることができます。
- 北部・海岸段丘:ダイナミックな風景が広がり、アップダウンがあるので体力的難易度が高い
- 中部・リアス式海岸:ギザギザした海岸線で潮風を感じる事ができる
- 南部・仙台平野:神社などの歴史的スポットを巡る街歩きメイン
このため、北上するのと南下するのでは見える景色や難易度が違います。
以下の表をルート決めの参考にしてください。
南下 | 北上 | |
---|---|---|
風景 | 自然から街歩きへ | 街歩きから自然へ |
難易度 | 徐々に歩きやすくなる | 徐々にキツくなる |
その他 | 地図などは北起点で書かれている事が多いので、距離などがわかりやすい | ・太陽を背にするので、眩しくない ・早い段階で名取トレイルセンターに立ち寄れる |
べんぞー
南下は肉体的・精神的に余裕を持って歩けるルート、北上は徐々に盛り上がっていくルートという印象だよ。
船は欠航を想定して柔軟に対応する
みちのく潮風トレイルはルートの中に船で移動する区間があります。
【船の移動が必要な区間】
- 浦戸諸島(塩竈〜桂島〜野々島〜寒風沢〜宮戸島)
- 石巻〜田代島〜網地島〜鮎川
- 金華山(鮎川〜金華山、または女川〜金華山)
船は天気の影響を大きく受けやすく、風が強い日は船が欠航になることがあります。
船の運行情報や時刻表は、以下のHPで確認するようにしてください。
船が欠航した場合は慌てるかもしれませんが 、以下の対処法を参考にして乗り越えてください。
- 船が出るまで町に滞在する
- 電車で移動して、他の区間を歩く
- 臨時便が出ている期間に合わせる
船が出るまで町に滞在する
船が欠航した場合、最もシンプルな対処法は船が出るまで町に滞在することです。
船の欠航だけでなく、悪天候で歩けない日もあるので予備日を取っておくことが大切です。
町に滞在する場合は、観光や宿で体を休めるなどして有意義にすごすことができます。
べんぞー
一度欠航が決まったら、その日は船が出なかったよ。
浦戸諸島と石巻〜鮎川の区間では毎日船が出ているため、天気が回復すれば翌日の船に乗ることができます。
ただし、金華山へ行く船は基本的に土日のみの運航となるため、注意が必要です。
電車で移動して、他の区間を歩く
天候がしばらく回復しない場合や、土日の金華山行きの船にタイミングが合わない場合は、電車で他の区間に移動する方法があります。
幸いにも、船の移動がある3つの区間は電車やバスなどの公共交通機関で他の区間に移動が可能です。
例えば、以下の投稿のように、電車移動して先に歩ける区間を歩いてから、後日船に乗るように調整ができます。
船は天候に大きく影響を受けるのと、金華山行きの船が土日に限定されているため、一筆書きでスルーハイクするのは難易度が高いです。
その時その時で柔軟にルートを変えていくことも大切になります。
臨時便が出ている時期に合わせる
金華山行きの船は基本的に土日のみなので、船が欠航すると次便が1週間先になってしまう可能性があります。
べんぞー
さすがに1週間町に滞在したり、電車で他の区間を歩くのは難しいよね。
金華山行きの船はゴールデンウィークなどの大型連休になると土日以外にも臨時便で船が運行するようになります。
臨時便がでるタイミングを狙えば、たとえ欠航になってもスケジュールの調整がしやすくなるので、臨時便が出る時期にMCTを歩くのを検討するのも一つの方法です。
宿泊方法を考える
みちのく潮風トレイルのスルーハイクは1〜2ヶ月の長旅なので、宿泊方法を考えておく必要があります。
行程を大きく分けるのは野営の有無です。
野営をする場合、どこで野営をするか目星をつけておいたり、どれくらいの頻度で行うか考えておきましょう。
宿泊施設について
宿泊施設の数は地域によって偏りはあります。
あまり宿泊施設がない地域でも、公共交通機関を利用すれば宿がある場所まで移動できるので、困ることは少ないです。
ですが、公共交通機関も宿があまりない区間も一部もあります。
その区間を野営をしないで歩く場合は、事前にしっかりと計画を立てることが大切です。
宿探しは楽天トラベルやアゴダなどの旅行サイトやGoogle Mapなどを使えば比較的簡単に見つけられます。
べんぞー
前日や当日の朝にその日のゴールを決めて、直前になってから予約するようにしてたよ。
他には「みちのく潮風トレイルサポーターズ」にお世話になるという方法もあります。
みちのく潮風トレイルサポーターズは、トレイルへの送迎や割引価格で宿泊できる施設、私有地を無料で利用させてくれる方々など、様々なサポートをしてくれます。
「みちのく潮風トレイルサポーターズ」には旅行サイトには載っていない情報もあるので一度確認することをおすすめします。
野営する場合はマナーを守る
野営をする場合はマナーを守るようにしましょう。
日本では、キャンプ指定地以外で野営をすることは基本的にNGです。
キャンプ指定地以外で野営をする場合は、以下に気をつけてください。
- 地域住民とコミュニケーションを取って、野営ができるか確認する
- 確認が取れない場合は、地元のルールや慣習に従い、慎重に判断する
- Leave No Traceを徹底して、野営した痕跡を残さない
地域住民とハイカーとの良好な関係は、トレイル文化の発展に欠かせません。
地域の方々や将来のハイカーのために、マナーを守りながらハイキングを楽しんでください。
食料補給を考える
みちのく潮風トレイルでは食料補給できる場所が多く、ほぼ毎日補給ができます。
大きな町や国道の近くではスーパーやコンビニ、ドラッグストアがあるので欲しいものが手にはいるので、補給で困ることはあまりありません。
べんぞー
2〜3食分の食料を持っていたら、完全に食料がなくなる前に次の補給ができるよ。
ただし、補給が難しい区間も一部あります。
例えば、箱崎半島、船越半島、重茂半島など長い距離を歩く区間は、補給が限られています。
その区間は食料を多めに持っておく必要があるので、事前にどこで補給するか確認しておくと良いです。
MCTの食事について気になる方はこちらの記事も参考にしてください。
小さな町での食料補給は注意点が必要
小さな町でも個人経営の商店などで補給ができます。
しかし、小さいお店は時間営業が短い場合や、支払い方法が現金の場合があり、買い物ができないリスクがあります。
買い物ができない事態を避けるために、以下に注意しておくことが大切です。
- 事前にお店が営業している時間を調べる
- 営業時間にたどり着くように歩くペースを調整する
- 普段から現金を使わない人は現金を用意しておく
装備を準備する
みちのく潮風トレイルは好きなハイキングスタイルで歩くことができます。
歩く時期、野営や自炊をするかどうかは十人十色です。
それぞれの目的や手段に合った装備を自由に選んでハイキングを楽しんでください。
べんぞー
基本的には日帰り登山の装備があれば十分。あとは、野営の有無で必要装備は大きく変わるかな。
私がMCTをスルーハイクしたときの装備はこちらの記事で紹介しているので、気になる方は参考にしてください。
まとめ:みちのく潮風トレイルの計画をしよう!
みちのく潮風トレイルを歩いた時の行程は以下になります。
- 日数:44日(2023/04/03〜2023/05/16)
- 総移動距離:1028km(スタート:相馬、ゴール:八戸)
- Zero Day:4日
- 宿の利用:20回
MCTの計画は以下の流れを参考にしてください。
- トレイルについて知る:より充実した旅にするため
- 地図を手に入れる:トレイルの全体像を掴む
- 日数を決める:歩くための必要な日数を把握する
- 季節を決める:休みと歩きやすい時期を調整する
- ルートを決める:どんな旅にしたいか決める
- 宿泊方法を考える:宿泊施設や野営の頻度を決める
- 補給頻度を考える:どこで何が買えるか把握する
- 装備の準備をする:必要な装備、あると楽しそうな装備を用意する
この記事がMCTを歩く人の参考になったら嬉しいです。