Pacific Crast Trail(以下略、PCT)は4000km以上あるメキシコ国境からカナダ国境まで続くトレイルです。
PCTをすべて歩くには約半年かかると言われています。
半年の歩き旅と聞いてどんな旅なのか想像できない人は多いと思いますが、それと同じくらいPCTを歩くための費用がいくら必要か検討つかないですよね。
私は2022年にアメリカのパシフィック・クレスト・トレイル(以下略、PCT)を152日間かけて歩いてきました。
その時使った金額は以下の通りです。
アメリカでの出費は、その時の物価や為替レートに大きく影響や、ハイキングスタイルによって大きく変わります。
今回は1つのモデルケースとして、私がPCTを歩いた時の費用を紹介します。
- PCTにかかった全費用
- 何にいくら使ったかカテゴリごとの費用
実際にPCTでかかった費用を知ることで、PCTの計画を具体的に進めることができます。
ぜひ参考にしてください。
べんぞー
節約に繋がるようなヒントも記載しているよ。
目次
集計方法
本記事では「トレイルを歩くのに必要な最低のお金」を集計しています。
集計の対象・対象外は以下の通りです。
【集計対象】
- 日本〜アメリカの往復の航空券代
- メキシコ国境からカナダ国境到着までの期間にかかった出費
【集計対象外】
- 日本で購入した装備費用
- パスポートやB2ビザなどの申請費用
- PCTスタート前・ゴール後の出費(ロサンゼルス、シアトルの滞在観光費)
基本的な考え方は、トレイルまでの交通費、ハイキング中にかかった出費、トレイルから帰るまでの交通費になります。
装備やパスポート・B2ビザなど申請費用は人それぞれ状況が異なるので、集計には含めていません。
集計する金額について
今回の費用計算は、PCTで使用していた楽天カードのweb利用明細票を利用しています。
明細票には以下のように請求額がドルと円、そして決済時の為替レートが記載されています。
本記事では円の請求額で集計してます。
ドルでの集計はしていないのでその点はご理解お願いします。
ちなみに、私がPCTを歩いた時期のレートは1ドル125〜151円と徐々にドル高になる変化幅が大きいですが参考にしてください。
現金決済の扱いについて
今回の集計では、現金決済は個別で集計をしていません。
その代わりに「現金化」というカテゴリでATMでキャッシングした金額を集計しています。
現金決済を集計していない理由は以下の通りです。
- アメリカでの決済はクレジットカードが主流で、現金を使う機会があまりなかった
- 現金を細かく管理するのは煩雑になってしまう
PCTの費用の総額:114万円
2022年に私がPCTを歩いた時の費用を紹介します。
全費用は1,147,323円でした。
各カテゴリの費用は以下の通りです。
もう少し金額が見たい方は以下の画像をクリックしてください。
PCTを踏破するのにかかった日数は152日なので、1日あたり約7500円の出費です。
べんぞー
一般的なアメリカ旅行の場合は1日あたり数万円することを考えるとかなり安上がりだったよ。
食費:約27万円
食費の合計は268,084円でした。
食費はスーパーマーケットなどで支払ったお金です。
食料の調達をするために町に行った回数は29回です。
食料調達1回あたりで約9100円使っています。
1回の補給で5日ほどの食料を買います。
1日あたりの食費は約1800円です。
安い食材をメインに食べていたためか、1日あたりの食費は思っていたより安かったです。
インスタント麺は、安価で軽量、カロリーもそこそこ高くて、どこでも売っているので、1日1食以上は食べていました。
以下の記事で、私がPCTでどんな食事をしていたか紹介しています。
気になる方は、読んでみてください。
ハイカーボックスは宝の山
運が良いとハイカーボックスの中に食料があります。
ジップロックで小分けにした食料のあまりなどが見つかることがあります。
食費を節約するために、買い物に行く前にまず最初にハイカーボックスを確認することも多かったです。
外食費:約17万円
外食の合計は170,745円でした。
外食費はレストランやカフェで支払ったお金です。
外食をした回数は72回で、1回あたり約2,400円になります。
ハンバーガー店では、ハンバーガー+フライドポテトで20ドル前後で、そこにドリンク代とチップ代を含めると、軽く30ドル以上になることはよくあります。
しっかりした食事を食べようを思うと、日本の飲食店に比べると高くなります。
べんぞー
ちなみに、お酒を含めないでこの金額だよ。お酒をたくさん飲む人はもっと高くなるかも。
街での食事はフラストレーションを開放する
トレイルを歩いている間は食事が制限されるので栄養面だけでなく精神的にもストレスが溜まります。
町に行った時はなるべく好きなものを食べるように心がけていました。
お腹が空いていると一度の食事では満足できないので、外食をした時は追加注文することもありました。
装備費:約13万円
装備費の合計は133,893円でした。
装備費は靴やウェアなどの購入で支払ったお金です。
テントの修理代、寒さ対策でパタゴニアのフリースや、壊れたウォーターフィルターの買い替え、穴の開いた下着や靴下など細々したものを買いました。
ガスも装備費に含めていますが、ハイカーボックスにある残量が少ないガス缶を再利用することで多少節約になります。
ガス缶はPCTを歩いている間に3回しか購入しませんでした。
靴は何度も履き替えるので、出費が増える
装備で主な出費は靴でした。
2万円以上の靴を4回買ったので、靴だけで8万以上の出費になります。
ALTRAのLONE PEAK 6は着心地がよく、自分の足に合っていたので何度も買い直しましたが、1000kmくらい歩くと靴の側面に穴が開くのとクッション性能が落ちてきます。
ソールが擦り減ると滑りやすくなり、穴が空くと足が汚れて豆ができやすくなるので、ストレスが増えます。
値段が高いのがネックですが、靴はハイキングのパフォーマンスや質に直結する大切な装備なので、快適に歩くには靴の交換を惜しまない方が良いです。
PCTのような過酷で長期間の旅では、装備は消耗品と考えてある程度の出費は覚悟しておいた方が良いです。
以下の記事はギア選びのヒントになるような内容になっているので、よかったら読んで見てください。
宿泊費:約8.3万円
宿泊費の合計は83,122円でした。
宿泊費はホステル、モーテル、Airbnb、有料キャンプ場など有料の宿泊施設で使ったお金です。
有料施設は19泊しており、1泊あたりは約4,400円になります。
毎日クタクタになるまで歩いているので、シャワーやベッドで体をゆっくり休ませることができる宿はとても快適です。
しっかりと休息を取るために、定期的に宿に泊まることが必要になります。
複数のハイカーと一緒に泊まると少しお得
Airbnbやモーテルは他のハイカーと割り勘することで、割安で泊まることができます。
Airbnbはモーテルに比べて少し割高ですが、キッチンを自由に使えます。
スーパーマーケットで大勢で買い物をして、料理をするのは楽しいので良い思い出になります。
自炊をすれば好きなものを食べることができますし、外食をしなくてすむので、外食費と宿泊費のトータルの費用で考えるとモーテルよりAirbnbが安上がりになるかもしれません。
トレイルエンジェルにお世話になる
宿とは違いますが、トレイルエンジェルにもたくさん世話になりました。
自宅や庭などご厚意で泊まる場所を提供してくれます。ドネーションや、掃除や料理などのお手伝いをして良い関係を築くように心がけていました。
トレイルエンジェルとは、ハイカーに宿泊場所や食事、登山口までの送迎などのボランティアをしてくれる人。日本のお遍路さんのお接待の感覚に近い。
配送料:約2.3万円
配達料の合計は23,238円でした。
送料は郵便局から荷物を送ったときに使ったお金です。
メールドロップやバウンスボックスを頻繁に使う場合、配送費は思っているよりも高くなります。
郵便局での受け取り先が平日しかできないので、行動が制限されるのがイヤだったため、あまり利用しませんでした。
メールドロップを利用したのは、食料の調達が難しいとされるStehekin、Mazamaだけです。
メールドロップとは、町やポイントに到着する前に送る食料や装備などの郵送物。バウンスボックスとは、装備の入れ替えをするために郵送と受取を何度も繰り返す郵送物。
ベアキャニスターの送料は高いので、レンタルがおすすめ
PCTでは野生動物から食料を守るために、ベアキャニスターの携帯が義務付けられた区間が一部あります。
ベアキャニスターが必要な区間を歩き終えて、ベアキャニスターをアメリカから日本に送る時に約1.4万円かかりました。
ベアキャニスターと一緒に使わなくなった装備や、お菓子などのお土産を日本に送れるのは良かったですが、国際郵便だったため高かったです。
ベアキャニスターは700マイル地点のKennedy Meadowsにある「Triple Crown Outfitters」でレンタルができます。
約60ドルでレンタルできるので、費用を抑えたいのであれば、ベアキャニスターのレンタルが圧倒的に安いのでおすすめです。
べんぞー
他のハイカーはほとんどレンタルしてたよ。
交通費:約1.5万円
交通費の合計は15,237円です。
空港から町へ移動や、町から登山口までの移動で使ったお金です。
航空券は別カテゴリーのため、交通費に含んでいません。
アメリカの公共交通機関の運賃はだいぶ良心的でした。
べんぞー
無料バスが走っている町もあるので、あまり交通費をかけずに町の中を移動ができたよ。
寄り道をせずに、スムーズにスルーハイクをする場合は1万円以内に収まると思います。
私は、Tuolumne Meadowsとヨセミテ国立公園の往復バスに約4000円、一度スキップした区間を引き返すためのAshland〜Dunsmuirの夜行バスに約4000円を使いました。
トレイルと街の移動は基本的にヒッチハイク
町から登山口への移動は、基本的にヒッチハイクで車を捕まえてました。
もし、車が捕まらないときはUberを使うと便利です。
Uberを使えば、楽に登山口まで行けますし、他のハイカーと割り勘すればお金も節約できます。
通信費:約3.8万円
通信費の合計は38,263円でした。
通信費はアメリカで利用するSIMと、電波が入らないリゾート地の有料のwifiサービスに支払った料金です。
メインの回線はその時その時で調べるのが良い
外国での通信事情は年々変化しているので、一度自身で調べることをおすすめします。
べんぞー
もし、今(2024年3月)PCTに行くとしたら、Airaloのようなデータ通信専用のe-SIMを使うかな。
参考までに、2022年に私がPCTを歩いたときに使った回線はYellowmobileです。
プランはいくつか種類があり、私は1ヶ月で40ドルでLTE速度15GBまで使えるプランにしました。
データ容量を気にせず調べ物ができるのでストレスなく利用できましたが、アメリカ滞在中は15GB/月を使い切ることがなかったので、1ヶ月で30ドルでLTE速度6GBまで使えるプランでもよかったです。
Yellowmobileはどのプランも通話し放題なので、トレイルエンジェルなどへ電話をかけても通話料金はかかりません。
Yellowmobile料金は少し割高ですが、PCTを歩いている間は特に不自由を感じませんでした。
サブ回線は楽天モバイルがおすすめ
サブの回線には楽天モバイルがおすすめです。
海外ローミングの設定をすれば、アメリカでも2GBのデータ通信を無料で使用できます。
2022年11月に料金プランが変更されて月額税込1,078円〜になりましたが、サブ回線として十分に安いです。
メインの回線が使えなくなった時の保険になるのはもちろん、メイン回線が通話ができないデータ通信専用だとしても楽天モバイルがあれば日本で使っている電話番号をアメリカでも利用できるのでいざという時に困りません。
Rakuten Linkアプリという楽天モバイル専用の通話アプリを使用すれば無料で通話ができます。
べんぞー
Rakuten Linkアプリを使えば、データ通信量(1分の通話で約0.5MB)は発生するけど通話料はかからないよ。
ただし、海外から海外の電話番号への電話をかけた時だけは通話料が発生します。
もし自分から海外の電話番号にたくさんかけるようであれば、国際電話かけ放題のオプションを検討してもよいかもしれません。
\サブ回線におすすめ!!/
雑費:7,045円
雑費の合計は7,045円でした。
雑費は薬局での買い物や、洗濯やシャワーなどで使ったお金です。
何に使ったか覚えていない少額の決済も含んでいます。
観光費:1,382円
観光費は1,382円でした。
ヨセミテ国立公園でHalf Domeに登るためのパーミットの抽選に応募するための料金だけです。
パーミットは抽選で選ばれるため、当選しない場合もあります。私は落選しましたが、PCTを一緒に歩いていた他のハイカーも一緒に応募していてそのうちの一人が当選したので運良くHalf Domeに登る事ができました。
保険・医療費:約25万円
保険・医療費の合計は251,970円でした。
保険・医療費は損害保険の加入費や、アメリカで治療した際に使ったお金です。
PCTで一番大きい出費は、歯の治療に約20万円かかりました。
べんぞー
まさかのアクシデントのために費用は余裕を持って用意したほうがいいよ。
今後の旅にも耐えることができる治療を歯科医に相談したところ、保険適用外のセラミックの治療を受けました。
仲間のハイカーやその友人の助けもあり、歯が割れた2日後に治療が完了して、すぐにハイキングに復帰できたのは不幸中の幸いでした。
国民健康保険・健康保険に加入している場合、保険適用される治療であれば帰国後に申請することで治療費の一部が還付されます。高額医療費制度や、保険適用外の場合は医療費控除も使えます。
任意保険は基本的に不要、もし加入するならグローブパートナーがおすすめ
社会保険・国民健康保険の保険適用される治療の場合、アメリカでの治療費も保険適用となるので、任意で加入する保険は基本的には不要です。
もし、心配で任意保険に加入したい場合は、比較的価格が安いグローブパートナーがおすすめです。
年齢によって保険料は異なり、30代の場合は半年間で約4万円でした。
べんぞー
2022年はまだ某感染症のリスクがあったから、念の為に保険に加入したよ。
グローブパートナーは保険には珍しく、虫歯や親知らず、事故により歯の治療も保険の対象として適用されます。
航空券:約10万円
航空券の合計は104,842円でした。
行きの便は、ZIPAIRというJAL系列のLCC航空会社を利用して44,187円でした。
料金が安く、成田からロサンゼルスの直行便で移動が楽なのが魅力的な航空会社です。
渡米時期がゴールデンウィークと重なり、通常時より料金が高くなりましたが、それでもコスパが良かったです。
帰りの便は、シンガポール航空で60,655円です。
経路はシアトル発、ロサンゼルス経由の成田着です。
シンガポール航空は無料で予約変更が1回できるので、PCTのような歩き終える時期の大きくブレやすい場合に重宝します。
また、帰りは少しだけ贅沢しようと考えていたので、サービス品質が高いシンガポール航空を選びました。
べんぞー
予約変更はしなかったけど、機内食も美味しかったし、ゆったりした空の旅になったよ。
現金化(キャッシング):約5.3万円
クレジットカードのキャッシングサービスでATMから引き出したお金の合計は53,319円です。
現金決済はどこで何に使ったか、細かく記録をしていなかったため、各カテゴリの集計はせず「現金化」というカテゴリにまとめています。
現金はクレジットカードが使えないお店やキャンプ場、他のハイカーとの割り勘やチップ代など様々な場面で使いました。
べんぞー
日本円から米ドルの両替はしないで、スーパーなどのATMでキャッシングをして現金を引き出してたよ。
まとめ:使う時はしっかり使い、節約するときはしっかり抑えるメリハリが大切
PCTの全費用を紹介しました。
為替レートやインフレの影響あるので一概に言えないですが、最低100万円は用意しておいたほうが良さそうです。
お金は使うときは使って、抑える時は抑えてメリハリをもたせることが大切です。
ヘトヘトに歩き疲れている時はしっかり休む、町にいるときはお腹いっぱい食べるなどして、体調をしっかり整えてるのがとても重要になります。
用意できる予算は人それぞれなので、自分に合ったスタイルを歩きながら模索してください。
適度に節約をして普段できないような貧乏旅をするのも良い思い出になります。
べんぞー
大人数でモーテルに泊まる機会は滅多にないからとても楽しかったよ。
PCTを歩くのに、どれくらいの日数がかかったのか、一日どれくらいの距離を歩いたかなど行程について知りたい方は以下の記事を読んでみてください。
本記事がこれからPCTを歩く人の参考になったら嬉しいです。